遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求へ
遺言書などによって子どもなどの法定相続人の遺産取得分が大きく減らされると、子どもは「遺留分」を主張して遺産の一部を取り戻すことが可能です。
ただし近年の法改正により、遺留分を取り戻す方法が変更されています。従来は「遺留分減殺請求」という制度でしたが、法改正後は「遺留分侵害額請求」に変わっています。
今回は「遺留分減殺請求」と「遺留分侵害額請求」は何が違うのか、遺留分侵害額請求になるのはいつからなのか、町田・相模原の司法書士がご説明していきます。
1.遺留分とは
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人が取得できる最低限の遺産割合です。
不公平な遺言書などが残されていると、たとえ子どもや配偶者などの近しい相続人であっても遺産を受け取れなくなるケースがあるものです。そのようなとき、子どもや配偶者などは「遺留分」を主張して、一定範囲まで遺産やお金を取り戻すことができます。
遺留分が認められるのは、「配偶者」「子どもや孫、ひ孫など」「親、祖父母、曾祖父母など」が相続人になるケースです。兄弟姉妹と甥姪には遺留分は認められません。
2.遺留分減殺請求と遺留分侵害額請求の違い
法改正前の遺留分請求権は「遺留分減殺請求権」、法改正後の遺留分請求権は「遺留分侵害額請求権」です。これらの違いをみていきましょう。
2-1.法改正前の遺留分減殺請求とは
相続法改正前の遺留分請求権は「遺産そのもの」を取り戻す権利でした。この権利を「遺留分減殺請求権」と言います。たとえば相続財産に不動産や株式などが含まれている場合に遺留分を請求すると、請求者と請求された側が不動産や株式を「共有」する状態になっていました。共有状態を解消するには、遺留分の請求者や請求された側が別途「共有物分割請求」を行わねばならず、二度手間となっていました。
2-2.法改正後の遺留分侵害額請求とは
法改正後は遺留分の請求権が「遺留分侵害額請求権」に変更されました。これは「遺留分をお金で取り戻す権利」です。
遺留分を侵害された人は侵害した人に対し、「金銭」で遺留分に相当する額の補償を求めることができます。お金で解決すれば遺産の共有状態にはならないので、後の共有物分割請求などの必要はなくなり、一回でトラブルを解決できます。
3.遺留分に関する改正法の施行時期
遺留分に関する改正法が施行されたのは2019年7月1日です。2019年7月1日以降に発生した相続のケースでは「遺留分侵害額請求権」が適用されます。2019年6月30日までに発生した相続のケースでは「遺留分減殺請求権」となります。間違えないようにしましょう。
遺留分はただでさえ素人の方にはわかりにくい部分ですが、法改正によってさらに理解しにくくなるのではないかと思われます。どのように請求すれば良いかわからない場合、そもそも遺留分が認められるのかどうか不明な場合など、お気軽に司法書士までご相談下さい。
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