遺産分割前に預貯金を払い戻せる新制度
親御さんが入院されている場合などで「死亡したらすぐに預貯金が凍結されて困るから、死亡前に多少の預金を出金して置いた方が良いよ」
そんな話しを聞いたことはありませんか?
実は最近、法改正があって上記のような対応をしなくても凍結された口座から一部の預貯金を引き出せるようになりました。
今回は「遺産分割前に預貯金を払い戻せる新制度」について、町田・相模原の司法書士が解説します。
1.従来の法律による取扱い
人が死亡すると、その人の名義の預貯金口座はすべて凍結されます。権利のない人による不正な出金を防ぐためです。
従来は、たとえ相続人からの請求であっても金融機関は一切の払戻に応じませんでした。相続財産である預貯金は遺産分割の対象になり、相続人たちが遺産分割協議で分配方法を決定するまでは出金する権利が確定しなかったからです。
しかし、そのせいで葬儀費用や生活被害者に必要なお金すら出金できず相続人が困るケースが多数発生しました。
2.改正法による変更点
このように相続人が被相続人名義の預貯金を一切出金できないのは不合理なので、改正法では遺産分割前においても一部の預貯金の出金を認めました。
出金が認められるのは、原則的に「相続開始時の預金残高の3分の1に法定相続分をかけ算した金額」です。ただし1つの金融機関において150万円が上限となります。
たとえば親が死亡して2人の子どもが相続したとしましょう。A銀行に300万円、B銀行に150万円の預貯金があったとします。
この場合、長男はA銀行から「300万円×3分の1×2分の1=50万円」まで出金できます。B銀行からは「150万円×3分の1×2分の1=25万円」まで出金できます。
弟との遺産分割協議が済んでいなくても、75万円までの現金は手にすることができるので、葬儀費用や生活費などに充てることが可能となります。
3.取得した預貯金の取扱い
相続人が遺産分割前に金融機関から一部の預貯金を出金した場合、その金額は遺産の先取りとなるので遺産分割協議における取得分からは減算されます。
もしも出金した相続人に特別受益があり、払い戻した金額がその相続人の相続分を超過してしまった場合には、他の相続人へ超過分を返還する必要があります。
4.全額の支払いを受けるには仮処分が必要
新制度にもとづいて遺産分割前に金融機関から支払いを受けられるのは「法定相続分の3分の1」が限度です。それでは不足するケースもあるでしょう。
実は遺産分割前に法定相続分満額の支払いを受けられる可能性のある方法があります。家庭裁判所で「仮分割の仮処分」を申し立てて、預貯金をどうしても必要とする事情を示せば、裁判所の判断によって預貯金の全部や一部の仮払いを受けられます。
遺産相続が発生して預貯金口座が凍結されてお困りなら、ご紹介した新制度を利用して一部の払戻しを受けられます。相続に関する疑問や不安をお持ちの方は、お気軽に町田・相模原の司法書士までご相談下さい。
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